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利賀演劇人コンクール2018レポート③世界劇団(愛媛)インタビューその1


 北陸に他地域で活動する小劇場の劇団が来る機会はあまりない。北陸の劇評では、コンクールで出会った何名かの演劇人たちにインタビューを行った。愛媛県東温市を拠点に医師や医学生中心に結成されている世界劇団のメンバー、本坊由華子さん、赤澤里瑛さん、廣本奏さん、高山力造さんの4名にお話を伺った。コンクールで3人芝居「令嬢ジュリー」を熱演した。

世界劇団のメンバー。左から赤澤さん、高山さん、廣本さん、本坊さん。

●世界劇団

 愛媛県東温市を拠点に活動する、愛媛大学医学部演劇部OB・OGを中心とした医師と医学生の劇団。2013〜14年のC.T.T.松山selection・京都selectionで1位を獲得。2015年には中国劇王・四国劇王優勝や劇王天下統一大会Bブロック2位を獲得。2017年には若手演出家コンクール一次予選突破。松山・広島・北九州の三都市ツアーを敢行。2018年には三重・東京・愛媛の三都市ツアーを行う。

 世界劇団サイト http://worldtheater.main.jp


●今回お話を伺った方

本坊由華子さん…世界劇団主宰・演出・俳優。医師。

赤澤里瑛さん…世界劇団俳優。医師。

廣本奏さん…世界劇団俳優。学生。

高山力造さん…世界劇団ドラマトゥルク・演出。福岡で劇団主宰、演技講師等を行い、現在は東温市の地域おこし協力隊として舞台芸術を通した地域活性の活動を行う。

 


医師と医学生の劇団に、地域おこし協力隊も加わって


ーーよろしくお願いします。本坊さんが代表で演出で、普段はご自分で書かれたりも?


本坊:はいそうです。普段は自分で書いたりとか、古典戯曲をの演出もしました。


ーー赤澤さんと廣本さんが役者さん、そしてドラマトゥルグの高山さんですね。医者と医学生って珍しいですね。


本坊:学校(愛媛大学医学部)の演劇部が母体です。基本的に。


廣本:学校の演劇部が母体で、そこから派生した劇団なんです。


ーー(世界劇団とは)別に学校にも演劇部がある?


廣本:そうです、いちお部長やってます。


ーー部長なんですね。忙しいですね(笑)


廣本:そうですね(笑)


ーー(庭劇団ペニノの)タニノさんもお医者さんですよね。


本坊:そうです、そうです。お話したことがあります。「私も実は研修医です」って言ったら、「将来何科になるの?」って言ってて、「まだ決めてないっす」って言って(笑)


ーー演劇はずっとやってらっしゃるんですか?

本坊:私は大学2年生からです。


赤澤:私も大学2年生からです。演劇部に入ったきっかけは、もともと大学入ってラグビー部のマネージャーしてたんですけど。やめてふらふらしてた時に、先に本坊さんが演劇部に入ってて。その公演をたまたま見に行って、それが面白くて、ああ舞台っていいなって思って。


ーー本坊さんに誘われて?


赤澤:いや、ただただ一方的に舞台を見て、いいなと思って入ろうと思って入りました。


ーーで、入っておもしろいなと。ずっと役者さんで?


赤澤:はい。なんとなく本坊さんの演出にずっと出ていたという。


ーー本坊さん以外に演出の方は?


本坊:元々は別の人が世界劇団の演出とかしたりとか。


赤澤:医学部演劇部の名前が世界劇団で。創立自体は20年くらい前なんですけど。それが続いてて、私たちが医者になってもやりたいなって改めて劇団化したのがつい2年、3年ほど前なんです。


ーー廣本さんも大学から演劇始められて?


廣本:そうですね、大学2年から。最初に見たのがC.T.Tでお二人が出てたやつが、即興性をもとにして上演してて、構成は決まってるけど喋ってるのはその場で考えるみたいな。すごいおもしろくて。何かお祭りみたいな。紙吹雪とか飴ちゃんとか飛んできて。


ーーそれは学校でやってた?


廣本:それはシアターねこで。


ーーもともと演劇が好きで?


廣本:同級生が出ててそれに誘われて。その場で入部宣言するみたいな感じで。


高山:そんなエモーショナルな俳優さんだったの?(笑)


本坊:ほんとかなーって思ってた(笑)


廣本:入りまーす、って。


本坊:「ほんと?ほんと?」って。いきなり入って来たよね(笑)


ーー(赤澤さんと本坊さんは)同期ですか?


本坊:ここ(赤澤さん、本坊さん)が同期で、(廣本さんは)3つ下くらい?


廣本:3つか4つ下です。


ーーすごいですね。(卒業を機に)やめる人もいますよね。ちなみに高山さんは?


高山:僕は九州から移ってきました。去年の四月に移ってきて。ずっと福岡でやってました。以前は劇団を共同主催みたいな感じで作演出をしてて。大学の演劇部から始めて、ずるずる…なんか、就職氷河期で、やりたいことないから演劇ずっとやってて、そのままずるずる…。


本坊:ヤバいやつだ(笑)


ーー演劇中心で生きてきた感じですか?


高山:そうですね、アルバイトしつつなんか演技講師をやりつつ。


ーー演劇中心にこれまでも今も生きてる感じで、たまたま協力隊の募集があって?


高山:今は協力隊やりつつ畑やりたいなみたいな感じで。


ーー今は世界劇団のドラマトゥルクとして?


高山:というか、東温市に地域おこし協力隊で移ってきて。今はアートヴィレッジとうおんに関わっていて。


ーー世界劇団は今いらっしゃる4名ともう何人か?


本坊:そうですね。


廣本:音響の平野さんさんと。


本坊:あとは兵頭さん。


廣本:学生で演劇部員と掛け持ちで。



 


世界劇団の拠点、愛媛県東温市ってどんなところ?


ーー世界劇団さんは愛媛県の東温市が拠点ですか?


本坊:そうです。


ーー愛媛でも県庁所在地ではない、東温市というところはどのぐらいの規模の?


高山:3万5千人です。


ーー協力隊の方が詳しいですね。


高山:松山市の隣にあるベッドタウンみたいな感じです。


ーー2番目に大きいくらいの?


本坊:うーん?


廣本:2番目ではないです。


高山:もっと大きいとこがあります。


本坊:利賀村ぐらい?利賀村よりちょっと…


廣本:住宅地はあるかなあ。


高山:なんか変な感じ。松山市の郊外の領域と、めっちゃ利賀村っぽいところがあって。広いのに、人口密度が全然。


ーー愛媛の中でも東温市に劇団があるのが世界劇団さんぐらいですか?


本坊:そうですね。だと思います。


ーー基本的に松山市に劇団が多い?


本坊:シアターねこって劇場があって、私たちも基本的にシアターねこを拠点に活動していたんですけど、松山ではシアターねこで上演する劇団はたくさんあります。


ーー普段の上演はシアターねこで、稽古は東温市で?


高山:(本坊たちの通っていた)大学が東温市にあるんです。愛大医学部が。


ーー皆さん今も東温市のあたりに住んでらっしゃる?


本坊:はい、住んでます。



 


世界劇団は野育ちでアングラ?


ーー古典戯曲をされることもあるとこのことですが、古典て言っても色々あると思うんですけど?


本坊:三島由紀夫の「班女」だったりとか、寺山修司も前に上演したことがあります。


高山:既存の戯曲が7割くらい?3割オリジナルみたいな。


本坊:そうですね。私、長編作品は(次回公演予定の)「さらばコスモス」が初めてで。去年これ3都市ツアー回した作品の再演なんですけど。


ーー三重と東京と松山で今回公演をされるそうですが、その前は?


本坊:去年は広島と北九州と松山の3都市でした。


ーーいろんなところされてるんですね。もともと、三島とか寺山辺りの作品が、本坊さんのご趣味ですか?


本坊:そうですね。それはあると思います。


ーー今回は三島は課題戯曲に選ばれなかったんですね。応募する時にこれでやりたいと?


本坊:そうですね。希望を出してという感じで。


ーーそういうことなんですね。それであえて「令嬢ジュリー」を選ばれたと。


ーー今回「令嬢ジュリー」は、講評の時に、エモーションとかムーブメントって言われましたけど、ああいう感情的な演技だったり、フィジカルの部分を使ったような演出がいつも多いんですか?


本坊:そうですねやっぱりフィジカルがかなり私の演出の中でウエイトが高いと思います。


ーー結構大学から始められてあの動きを身につけられたんですね。すごい動きますよね?


本坊:特に誰かから習ったわけとかではないんですけど。


ーー自分の中から湧き上がる動きですね?


本坊:そうですね


ーー結構動かれてたのが、今回は本坊さんだけだったんですが、普段もそうなんですか?


本坊:みんな動きます。「令嬢ジュリー」でいうと私のような役割だと思いますが、(次回公演予定の)「さらばコスモス」という作品では、kunstkammerさんという方が、抽象的な身体を、全身白塗りで作品の核のテーマとして背負ってもらうみたいな役割を、この作品では彼に担っていただいてます。


ーーあの、アングラが好きなんですか?


本坊:あー。アングラ演劇っぽいねとは言われるんですけど。


高山:本谷有希子の戯曲とかも演出したりしてるんですよ。


本坊:昔ですけど。


高山:それが面白いなと思って。なんで本谷有希子なんだろうって。三島とかああいうのもやって。


ーー本谷有希子の何を?


本坊:「乱暴と待機」とか。


ーー映画になったやつですね。


本坊:アングラは特に好んで見に行くみたいなことはいないんですけど、なんか出来上がったものを見たらなんかアングラだなとか、泥臭いなみたいな。原始的な部分は何か結果としてカラーとしてあるなっていうのはあるんだなというか。(赤澤さんに)そういうものを見に行ってるわけじゃないんだけどね。


赤澤:そうですね。


ーーこの演出に影響を受けたとかそういうわけでもないんですね。


本坊:私は特にないです。たぶん。


ーーいつの間にかこういう感じになっていった?


本坊:はい。


高山:そんなにこの人が好きとかいうこともない感じ?


本坊:ない…。


高山:なんかでも、野育ち感というかね。


本坊:野育ちです。


ーー白塗りだったり、今回だと仮面をつけていたりして、何かに影響された訳じゃなくて

自分でそういうのが好きなんですね。


本坊:そうですね。


世界劇団の過去の公演
世界劇団 過去の公演(提供:世界劇団)

 

 インタビューその2では、社会人として地方で活動を行う演劇人として、長く劇団活動を続けて行くために考えていること、そして、母体となった大学演劇部との関わりをお伺いした。 インタビューその2

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