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利賀演劇人コンクール2018レポート④世界劇団from愛媛インタビューその2


 愛媛で活動する世界劇団へのインタビューその2では、世界劇団の母体である大学演劇部との関わりや職業との両立、20代の演劇人として地方で長く演劇を続けるための考えていることについて、そして、同じように大学演劇部からOB劇団を経て演劇を続ける高山さんの体験談も併せて伺った。

世界劇団のメンバー。左から赤澤さん、高山さん、廣本さん、本坊さん。


もう一つの世界劇団と香川の演劇フェス

ーー大学演劇部時代の劇団名をそのまま使ってるとのことですが、大学の演劇部は別の名前に?

廣本:や、医学部演劇部世界劇団ていうのと、世界劇団と。

ーー世界劇団が2つあるんですね?

廣本:すごくややこしんですけど。

本坊:でも、別にそんな、一緒に組むんだったら一緒にやろうみたいな。それぞれのペースで。私たちはシビアにやる方なので、どうしても演劇ちょっとやりたいなってた子たちにとってはたぶんかなり辛いだろうなと思って。

ーーもうちょっとガチでやりたい人はこっちみたいな?

本坊:やりたいんだったら、全然一緒にいいよって感じだけど、そんなに無理強いしたくないみたいな気持ちもあって。演劇部っていう形態は残してた方がいいなとは思ってて。ちょっとやってみたいっていう子たちを中心に、9月の第1週に※カブフェスっていう香川でちっちゃい演劇祭に出るんですけど。

カブフェス・・・香川にある株式劇団マエカブが主催するマエカブ演劇フェスティバル。国の重要文化財高松城跡披雲閣で行われている。2018年は四国、中国地方を中心に、北海道、愛知、福岡などから30団体が出演予定。

マエカブ演劇フェスティバル2018チラシ

ーーカブっていうのはどういう字を書くんですか?

廣本:カタカナです。劇団マエカブっていう劇団が香川にあって、そこが主催してて。

本坊:フェスで、小さな作品を音響と照明を組まずに、大きいお城のいろんな部屋で、なんかこう同時多発的にいろんな劇団がやるみたいな。楽しいお祭りみたいな。こっちの方にはちょっと演技やってみたいっていう、初めて出る子とかは、こういうので楽しんでほしいなっていうのはありますね。

ーー社会人の方の世界劇団にカブフェスで出る時に、その子たちも一緒にやるみたいな?

本坊:その子たち中心で出る、みたいな。

廣本:演劇部世界劇団が出るみたいな。

赤澤:高山さんがそっちを演出してます。

ーー高山さんがそちらで?医学部演劇部の方の演出を高山さんがやっている?

本坊:はい。

ーーあんまり垣根がない感じなんですね。世界劇団という名前に思い入れがあってそのまま使ってる?

本坊:そうです。そんな感じです。変えるのもなんかなって。もともとあったし、別に今から変えてもなあって。

 

「喧嘩が意味ないと思ってるんで」稽古では話し合います

ーーけっこう皆さん穏やかな感じなんですね。

本坊:やばいやつだと思われてた(笑)。

赤澤:土地柄ですかね。おおらかな人が。

ーー「もう稽古来ないんだったら、いいわ」みたいな。そんな感じではない?

本坊:ベースにそれはあるかもしれないけど。

廣本:長年やってるからそういう共通認識のところは…。

ーーみなさんお医者さんだけあって心が広いというか(笑)

一同、笑う。

廣本:いやいや。

本坊:広くないです(笑)

ーー喧嘩したりとかはありますか?

高山:ものすごく建設的な話をしている感じはあります。

本坊:喧嘩が意味ないと思ってるんで。

本坊:生産的じゃないんだったらやらない傾向は強いですね。生産的な話し合いはするけど。

ーー意見がぶつかることはある?

廣本:意見がぶつかるというよりも、「それは違うんじゃない?」くらいは。

本坊:話し合いしながら論点がずれたら、「これ今何の話し合い?」みたいな。「何のための話なのか」みたいな話をするので、なんか喧嘩にはならない。

廣本:感情をむき出しにしてやりあったりはしないですよね。

赤澤:ないですねー。問題を解決するためにどうしようかっていう。

高山:僕の(以前の)劇団もそうでしたね。冷静な。僕が一番、感情的になりやすいです。

ーー今、全くそんな感じしないですが?

高山:(今の)この感じはあんまりですけど。僕が多分一番キレやすいので、福岡で一緒にやってた織田くんとかが、「いやいやいや」っていう。

猛暑の利賀村での稽古中の一コマ(提供:世界劇団)

地方で働きながら長く演劇活動を続けるということ

ーー高山さんは今後福岡の仲間と愛媛で一緒にやったりは?

高山:そこがあんまり活動できなくなったのでこっちに来たんです。

本坊:ぴょろーっとこっち来た(笑)

高山:福岡でvillage80%ていう劇団をやってたんですけど。九大の演劇のOBでやってて。大学の施設を使わせてもらえてたので、稽古場代かかんなくてずっとやれてたんだけど。劇団員は福岡出身じゃなくていろんな県から来てて、(世界劇団と)状況は似てる感じだったんです。僕35、6の時に劇団員がちょうど30に差し掛かって。

ーー家庭もったりとか?

高山:結婚とか将来どうするとかなった時に、活動の頻度が落ちてきて、僕はすごいやりたくてってなった時に、まず北九州に移ろうと思って。北九州にまだ若い俳優とかいろいろいるから一緒にやれるかもと思って、北九州で作品作ってみたりっていうトライしてて。年1ぐらいで劇団の作品作ってやってたんですけど。それも2015年くらいでちょっと終わって、どうしようと。

ーー運良く東温市に?

高山:今までの自分のつながりのリソースとかでやるにはもうちょっと限界だなーって思って。違う仕事した方がいいのかとかいろいろ思った時に、たまたま受け入れてもらえたので。

ーー他に(地域おこし協力隊に)応募していた人はいたんですか?


高山:何人かいましたけど、そんなには。


ーー適任だったんですね。高山さんが一番。


高山:僕がちょっと口がうまかったみたいな。


一同、笑う。


ーー本坊さん、赤澤さんはお医者さんですが、一般的には劇務だって言われてますけど、やっぱりそうなんですか?

本坊:そうです。彼女(赤澤さん)は非常に。

赤澤:そこは本当に劇団に受け入れてもらっているというか、私が仕事の関係で稽古開始より1時間、1時間半遅れていくことがかなり多いんですけど、そこを演出がほんとに受け入れてくれてて。

本坊:仕方ないことなので。仕事とか家庭とかがあったら演劇やめなきゃいけないみたいな現状が30代ぐらいに差し掛かるとどの地方でもあって。そこをどうやって両立していくかみたいなのも、なんかロングスパンで考えないといけなくて。

ーー長期的な目で見られてるんですね。もうすでに。

本坊:や、でもそうしてかないと、作品のクオリティをあげるっていうことと、俳優を育てるっていうプロセスみたいなこと考えたら、仕事があったら演劇やめないといけないよねとか、子供産んだらやめないといけないよね、ということ自体がなんかちょっと貧しいような気がするので。それを視野に入れてやっていく方法じゃないと、地方ではすぐぱっと「代役じゃあ誰か連れて来て」みたいな感じには、選択肢として上がらないので。

ーー就職の意味で言うと、お二人(赤澤、本坊)は就職されているから、しばらくはここにずっといようと思えばいれるし、廣本さんも東温市に就職しようと思えばできる?

廣本:そのつもりです。劇団があるんだったら。

ーー3人はキープですね。ちなみにみなさん出身は東温市の方じゃないですよね?


本坊:出身は、鹿児島です。


赤澤:私、香川県です。


廣本:福岡です。


本坊:高山さんは広島です。


ーー全然縁もゆかりもない人が東温市に?


本坊:地元感はないですよね。


ーーすごいことですよね、それって。


本坊:平野さんていう音響の子も、兵庫出身なんですけど、兵庫戻るのかなと思ったら、愛媛に就職して。


高山:別の学部だったけど、松山で就職して東温市に通ってます。


本坊:ありがたいです。

高山:そうねー。みんな世界劇団に愛着持って残ったね。

赤澤:残りましたねー。


本坊:いろんな奇跡と偶然とタイミングだよね。私たちの世代が偶然重なって作品を作ったっていうこともいわば奇跡だと思います。


ーー「利賀まで行くけど行く?」、「うん」ていう人もなかなかいないですよね。

本坊:そうだと思いますね。本当にタイミングと運と。


 

 若さのゆえの情熱だけではなく、東温市に腰を据えて長期的な視点を持って活動する世界劇団。インタビューその3は、次回公演の3都市ツアーついてと、本坊さんいわく「棚からぼたもち」な東温市の舞台芸術に関する取り組み、アートヴィレッジとうおんについて伺った内容をお届けする。

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