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利賀演劇人コンクール2018レポート⑦新たなマイムの表現をー豊島勇士さん(maz/京都) インタビュー 2/2


 

 利賀演劇人コンクール出場者インタビュー第2弾、演出家・豊島勇士さんのインタビューの続編。コンクールの感想や今後の予定、立ち上げて4年目の団体として、小劇場が減少する京都でどう活動を行っていくか、拠点を持つことの魅力について聞かせていただいた。

mazの黒木夏海さんと豊島勇士さん
左からmazの黒木夏海さんと豊島勇士さん

 

コンクールのトップバッターとして、上演後に全団体を見られたことがラッキー


ーー今回初めて参加されてたということですが、これまで利賀村を訪れたことはありましたか?


豊島:去年、上演審査を一つ見に来たのがあって。


ーーその時点で応募しようと?


豊島:応募したいなと思ってて、それで1回見に来ようという感じで。


ーーそうなんですね。コンクールは参加されてみてどうでした?


豊島:実際上演するまではすごいいっぱいいっぱいだったんですが、自分でもちょっとそれでいいのかなと思うんですけど、終わって他の団体を見て、講評を聞いてっていう中で得る刺激がすごく多くて。やっぱそれだけですごいよかったなと。ただ自分が例えばスカラシップで見るだけだったら、自分がそこまでの切実さをもって聞いてたかどうかっていうのがわかんないかもなと思いつつ。


ーー上演審査参加者として来たからこそ、他の上演者の気持ちに共感しつつという?


豊島:そうですね。直に分かりつつという感じなのかもしれないです。やっぱりすごいそれが良かったなと思います。上演して、どうしても予定が合わないと帰らざるを得ないと思うんですけど、今回たまたまトップバッターで、その後の岩舞台の上演も見れて、結局最終日までっていうのなので、それはすごいラッキーだったなと思ってます。


利賀演劇人コンクール参加メンバー。京都の稽古場にて(写真提供:maz)
利賀演劇人コンクール参加メンバー。京都の稽古場にて(写真提供:maz)

 

自主公演でお客さんを間違いなく呼べるところまで持って行きたい


ーー今回は「マクベス」で、その前も中島敦さんの作品で既成戯曲でしたけど、今後も?


豊島:基本的にはそうですね。自分でテキストを書くのはたぶん難しいかなと思ってて。もともと高校から演劇部だったんですけど、最初は脚本を書こうと思って入ったんですけど、もうその時に向いてないというがはっきり分かったので。基本的には既成のテキストというか小説だったりするかもしれないし、戯曲かもしれないし、というイメージで今はいますね。


ーーこれまでの公演はどのようなところで?


豊島:最初の「狐憑」っていうのは本当にその東山青少年活動センターっていうところでやりましたね。公民館のような。創造活動室っていう部屋があって、いわゆる小劇場の公演が打てるような設備がちょっとだけあってみたいな。


ーー普通にイメージする公民館とちょっと違う?


豊島:ちょっと違う感じの。


ーー今後公演されるとしたらここでやりたいとかはありますか?


豊島:それが難しいところがあって、京都って小劇場がぼんぼん潰れていってて。主だった小劇場と目されていたところが。


ーー※アトリエ劇研など?


アトリエ劇研…2017年8月に閉館した京都の小劇場。30年以上に渡って京都の小劇場界を支えた。劇場館主だった波多野茂彌が立ち上げたNPO劇研は現在も舞台芸術関連の事業を行う法人として精力的に活動を行なっている。


豊島:アトリエ劇研と※元・立誠小学校っていうもともと小学校だったちょっと雰囲気のある建物もあったんですけど、そこも使えなくなってしまってて。どこでできるかな、みたいなこと考えてっていう感じですね。なので今は劇場のサポート的な感じの企画を応募したりっていうのが多いですね。それこそ(今度参加する)※KAVCアートジャックのように、ある程度劇場さんのシーンがある中で公演させてもらえるようなところに当たりを付けて。自分の自主公演でお客さんを間違いなく呼べるな、っていうところにまず持って行かないといけないなと思ってます。


※KAVC(カブック)…神戸アートビレッジセンター。神戸駅から徒歩10分のところにある、総合的な文化・芸術施設。演劇、ダンス、映画、美術などのイベントが開催されているほか、創作活動に利用できるレンタルスペースもある。KAVCアートジャックは、KAVC全館を使った美術・演劇・ダンス・音楽の体感型アートフェスティバル。KAVCアートジャック2018は2018年9月15〜16日に開催。


ーー少し認知度も上げていかないという?


豊島:そうですね。

 


ーー※飯田市の人形劇のフェスに参加されるそうですが、どこかのカンパニーのメンバーとして?


※飯田市の人形劇フェス…いいだ人形劇フェスタ。毎年8月上旬に長野県飯田市で開催される日本最大の人形劇の祭典。


豊島:単純に僕が行ってみたかったっていうのがあって。普通に今回と同じやつを向こうでも上演できるようにします。


ーー「マクベス」をそのまま持ってく?


豊島:そのままはさすがに無理だと思うんですけど。


ーーなるほど。この4人のメンバーで?


豊島:上演できる形に直してという感じですね。


ーー人形劇のフェスティバルだけどその枠に入ることができた?


豊島:人形劇だと言い張ってという感じですね。


ーー飯田市のフェスの後は?


豊島:KAVCアートジャックに演劇とかダンスとか色んな団体が参加するので、その1団体として今回の「マクベス」の演目で参加する予定です。



KAVCアートジャックに向けての稽古風景(写真提供:maz)
KAVCアートジャックに向けての稽古風景(写真提供:maz)

 

稽古場問題ー地方で創作拠点を持つことの魅力


ーー差し当たってその2つの公演を控えていて、また今後新作を?


豊島:そうですね。作りたいなという感じです。


ーー今回のメンバーでですか?


豊島:基本的には豊島と黒木っていうのがメンバーで。(今回出演した)中谷萌さんっていう人はこれまでにも何度か別の作品でご一緒したりとかしてて。で、まあいろいろ前提がある感じなんですけど、今回かわいあつしさんという人は初めて声をかけてご一緒させてもらってて。今後メンバー的な部分はどうなるかっていうのが、どうしても身体の技術がどこまで仕上げられるかというか、どこまでの精度を持てるかっていう話になってくるので。講評でもちょっとそういう指摘もありましたが。


ーーマイムを専門にやってきた人と一緒にやりたい?


豊島:そういう方とやるのか、それとも一緒にブラッシュアップしていけるメンバーと詰めていけるのかみたいな。


ーーもうちょっといたらいいかなという希望が?


豊島:ありつつという感じですね。


ーー今後も拠点は京都ということで?


豊島:そうですね。悩んでるところはあるんですけど、基本的には京都かなと思います。


ーーマイムですとかオブジェクトシアターをやる上で京都は環境としてやりやすいですか?


豊島:どうなんでしょうね。でも利賀に来て改めて思ったことっていうのが、やっぱり京都にしても、たぶんこれ東京にしてもそうだと思うんですけど、すごく稽古場の問題っていうのがあって。どうしても大掛かりな仕掛け的なことを作品自体に組み込もうとしても、それがその本番の劇場に入ってからじゃないと使えないみたいな。


ーーセットを置きっぱなしにできないという?


豊島:そうですね。


ーーずっとそこを借りっぱなしにできるところがいいという感じですか?


豊島:世界劇団の人とも話をしたりした時に、やっぱり土地が余っていると、その中で試せる前提とか猶予とかが全然違ってくるよなあというのがあって。それこそ人がいてっていうことさえクリアできれば、すごく、なんだろうな、地方の魅力みたいなのはあるんだろうなあと思ったりして。最近、※瀬戸内サーカスファクトリーっていう、何で急にサーカスなんだみたい感じだと思うんですけど(笑)、マイムの表現といわゆる現代サーカス、そのシルクドソレイユじゃないですけど、彼らの表現ていうのがそんなに垣根がないんじゃないかと。香川を拠点に活動されてて、僕も最近調べて知ったんですけど、フランスの有名なサーカスの演出家の人とかパフォーマーの人とかを招聘したり、っていう活動をけっこうされてて。そういう拠点を持ってみたいなのがすごい魅力的だなあと。


瀬戸内サーカスファクトリー…一般社団法人瀬戸内サーカスファクトリー。香川県高松市にある日本初の「現代サーカス」専門プロデュース団体。2019年には同市に創作活動の拠点もできる予定(2018年9月現在)。


ーーいい場所があって人も集まればそこで?


豊島:っていうのがすごくいいなと。


ーー今後もしかしたらそういうところに?


豊島:そうですね。


(2018年7月29日利賀創造交流館)

 

 豊島さんからは、いいむろなおき、小野寺修二、MIMOS、瀬戸内サーカスファクトリーなどのキーワードとともに、マイムをベースにした独自の路線を行く演出家ならではのお話を聞くことができた。また、コンクール参加後に上演を続ける「マクベス」で若手演出家コンクール2018の一次審査も通過したとの朗報もあった。mazは今後どのように進化してゆくのだろうか。

 

maz公演情報

KAVCアートジャック2018参加

「マクベス」

神戸アートビレッジセンター

2018年9月15-16日

両日とも17:30開演(要整理券)













 
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