SCOTサマーシーズン2018観客インタビュー2組目は、建築を学ぶ学生木村武史さんと桐朋学園芸術短期大学で演劇を学ぶ学生松隈彩香さん。利賀村へ向かう途中の駅で知り合ったばかりというお二人です。
ーー利賀村は初めてですか?
木村:はい。卒業論文でアングラの発生理由っていうのを、建築学科なので都市論から捉えたくて、それで鈴木忠志を見にきました。
松隈:私は昨年上京して大学から演劇を学び始めて。俳優やりたいのに利賀村に行ってないのはおかしいなと思って、今年やっと来ました。昨年先輩が利賀へ行ったと聞いて。それまでを利賀村っていうところすら知らず、演劇祭をやられているということも知らなくて、知らなかった自分が恥ずかしくなって、今年こそはと思って。
ーーちなみにご出身は?
松隈:佐賀です。佐賀では演劇をしてなかったので、通ってる学校ではもともと演劇やってる人が多いので知識のない自分が悔しくて。周りが作家さんや演出家について知識がある人ばかりで引き目を感じて。
ーーどうですか利賀に来てみて?
松隈:異世界に飛んできたようです。東京と違う空気感もそうですし、芝居をこんなに見られる環境があって、時間の流れも切羽詰まってないというか、穏やかで。
ーー鈴木さんの作品はどうでしたか?
松隈:これがスズキメソッドの身体性と呼ばれる演劇か、という感じでした。
ーー松隈さんは演劇学校で勉強してるそうですが、将来的に女優さんに?
松隈:もともとお芝居をやりたいと思ったきっかけがテレビドラマだったんです。テレビドラマが芸術じゃないというと語弊があるんですが、芸術として演劇をやるっていうことを知って、私がやりたいのはどれなんだろうと模索しているところです。商業演劇と呼ばれるようなメガミュージカルとか小劇場とか、学内でも先輩たちの公演などそれぞれを見てきて、自分はこうしたいなと思ったり。それを踏まえて自分が一番やりたいものが確立されていないです。
ーー東京以外で活動する可能性も?
松隈:東京でやりたいなというのは半分くらいは決まってます。
ーー木村さんは今回建築の観点からということでしたが、いろんな劇場を見られましたか?
木村:そうですね。写真と図面と自分の目で見るのとは全然違うので、とても新鮮な気持ちです。
ーー普段から演劇を?
木村:半年ほど前から演劇を見るようになりました。演劇で最初に見たのがたまたま唐十郎の赤テントで。そこからアングラに興味を持ちました。それを研究室の先生に話したところ、こういうのがあるよっていうので初めて利賀村のことを知って。
ーーそしたら利賀村を知ったのは最近ですね。
木村:そうですね。調べ出したのは3ヶ月ぐらい前ですね。
ーー将来的には建築の方で?
木村:来年からはテレビ局の美術さんになるんですが、人生の最終目的としては美術から建築の方に寄与しようと思っていて。虚構の空間を建築に還元すると楽しいサイクルになるかなと思っています。
ーー劇場建築の方に移行していきたい?
木村:劇場というか住宅とかいろんな建物ですね。
ーー利賀村自体の印象はどうですか?
木村:都心から隔離されてるっていうのは、すごく演劇が日常に入り込んでくる重要なキーワードだと思って。鈴木さん自身が商業から外れて演劇と真摯に向き合ってるというのがすごく伝わってきました。あと、僕は一人で来たんですけど、こうやって出会った仲間とお話できるのがすごく楽しくていい経験になりました。
ーー お二人は一緒に来たわけではないんですね。
松隈:私たちは※越中八尾駅で会って、利賀村行きのバスで一緒になって。利賀に着いてから大学の先輩である瀬尾さん(インタビューその1)とたまたま会って、みんなで行動してるという感じです。
※越中八尾駅…富山市内にある利賀村の最寄駅にあたる駅。利賀行きのバスが出ており、利賀までは1時間ほどかかるが、富山市から利賀へ行く公共交通機関はこのバスのみ。
木村:最高な夏ですね。平成最後の夏にね(笑)
(2018.8.31利賀創造交流館)
演劇以外の分野からSCOTに関心を持つ人も訪れているようだ。人里離れた利賀村だからこそ、道中で目的地が同じ人同士で交流することもあれば、利賀に着いて予想外の人と再会することも。最初は一人で参加する予定が、気付くと現地で仲間とわいわい過ごすという、夏フェスのようなことはSCOTサマーシーズンという演劇フェスでも起こるのだ。
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