アジア演出家フェスティバルで、ブレヒト『処置』を斬新でユーモアたっぷりに手がけた韓国チーム。演出家のキム・ジマンさんにお話をうかがった。
●キム・ジンマンさん・・・韓国の劇作家・演出家。劇団アンサンブル。
ーー利賀村は初めてですか?
はい。鈴木さんの作品を実際に見るのも初めてです。演劇を中心にしたフェスティバルに参加できて、すごく楽しくて、面白くて、光栄に思っています。ここ(宿泊場所)でいろんな人と演劇の話ができるのがハッピーです。
ーーどのぐらい演劇活動を?
約30年くらいです。
ーー韓国ではいろんなフェスティバルの委員長などをされているそうですね。韓国の演劇界
では重要人物ですね。
とても頑張って活動しています。
ーーご自身も劇団を?
(着ていた劇団のTシャツを見せて)劇団アンサンブルです。
ーー劇団アンサンブルも30年?
劇団アンサンブルは今年で18年です。
ーーいつもは演出だけですか?
本も書くし、演出もします
ーーどんな作品ですか?
ほとんどは自分のオリジナル作品を上演しています。韓国社会に関する作品を、ちょっと楽しく愉快に書いてます。パラドックスのように。
ーーコメディタッチですか?
少しコメディっぽくしながら社会を批判するような作品です。
ーー最近の作品はどんなものですか?
『HOLE』です。穴に関する作品です。二人の役者がいて、一人はずっと穴を掘り、もう一人はその穴を埋めます。彼らはただ掘って、それをもう一人が穴を埋める、ただそれだけの作品です。それが韓国社会や、世界全体の理不尽さを表現しています。
ーー例えばどんな理不尽さでしょうか?
例えば、持っている人はずっと持ち続け、そうでない人はずっとそのまま。最近韓国では女性の大統領が逮捕されました。友人が政治に介入した。役者たちはただ、穴掘りとそれを塞ぐ作業を繰り返すだけで、難しい作品ではなく、とても単純で、それがとても面白いのです。今日の『処置』の公演のように愉快な演出スタイルです。深刻な内容を愉快に。社会批判だけど楽しさを失わないようにしています。
ーーお客さんに社会批判であることは伝わりましたか?
「長い間の過ちを、正しくするように!」というシンプルなメッセージは伝わりました。
ーー韓国と日本の演劇に違いは感じましたか?
たくさん感じてます。
ーー日本の演劇は見たことがありましたか?
韓国に招待された公演を見たことがあります。
ーー演劇をするのにお金がかかりますが、日本では行政や芸術団体が補助金を出してくれることがありますが、そんなに多いとは言えません。韓国も同じですか?
韓国でも役者も演出家も厳しい環境で芸術を創っています。国からお金をもらうこともできますが、大変なことです。頑張って要請してもらって公演をすることもあれば、全くもらわずにつくることもあります。
ーー社会批判の作品の場合は、助成を受けるのは難しいのでは?
それは問題にはなりませんが、それよりも作品の完成度が大事です。韓国は今、作品のテーマに対しては厳しくありません。今は。すぐ前の政権では社会批判の作品はすぐに止められましたが、今は許されます。前政権は、反政権の立場の芸術家たちをブラックリストに入れていました。
ーー現政権になって作品を作りやすくなったのでは?
今の条件では、どんな内容でも自由に表現できます。前政権では、その政権に反する作品をたくさんやりました。圧力がかかり、いろんな形で止められました。でも今は大丈夫です。国民の力で大統領を変えたから。今の大統領は国民の意見をよく聞いています。
ーー前の大統領とは朴大統領のこと?
そうです。なので、本当にすぐ前のことです。
ーーキムさんの拠点はソウルですか?
メインはソウルですけど、各地にツアーに行きます。去年はインドに誘われて、公演しました。国際交流を頑張ってしようと思っています。エディンバラフェスティバルに誘われ、2回行きましたし、シンガポールのフェスティバルにも行きました。中国の4つの街のフェスティバルにも誘われて行きました。来年はパリで公演します。
ーーパリではどんな作品を?
パリ第三大学で、自分の書いた新しい作品を上演する予定です。『シルムサジョルタン(씨름사절단)』という作品を上演しようと思っています。シルムは韓国の相撲です。アビニヨン、エディンバラで上演する予定です。
ーー日本での公演予定はありますか?
日本でも公演できるように頑張ってます。世界各地をツアーするつもりです。
ーーたくさんお話を聞かせてくださりありがとうございました。
楽しかったです。興味深く聞いてくださりありがとうございました!
(2018年8月31日利賀創造交流館)
日本語のわかる公演スタッフの男性が通訳をしてくださり、インタビューを行うことができた。韓国での演劇活動と政治との結び付きなど、政権交代の話題が日本でもよく報道されていたため旬な話題となった。今後、『HOLE』や『相撲使節団』などのオリジナル作品の日本公演の実現が楽しみである。
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